2005年11月01日

あれから1年・・

 Oさんがフロッサ・パソコンスクールの申込に訪れたのが丁度一年前。
事務所のドアを開けたときの沈痛で海の底まで引きずりこむような悲壮感を忘れることが出来ない。

「来月から通いたいのですが・・」
と消え入りそうな声で言ったあといきなり涙をぽろぽろと流し
「ちょうど主人の納骨を済ませて来年からパソコンスクールに通うつもりでしたが
娘に思い立ったがが吉日で早めの方が良いというものですから・・・・」

不幸を体全体に背負った50代後半の女性に一瞬たじろいたが
人生色んなことがあり、皆せいいっぱい生きている。
悲しみを乗り越え新たにチャレンジしようとするOさんに不思議に穏やかな気持ちで
「大変でしたね。来月からお待ちしております。」
と対応している自分がいた。

彼女は花屋さんのガラスドアに貼ってあったフロッサのパソコンスクールの宣伝をみて
応募してくれた。

人間いつ自分に振りかかるか分からない試練の中で必死に歯を食いしばり
生きていかなくてはならない。
どうして自分だけこんなに不幸が続くのか・・
Oさんは7年前に21歳で突然原因不明で亡くしたた息子さんの話も続けた。
聞けば聞くほどつらい人生だと思った。

悲しみに浸ってばかりはいられない。
何かをしなくてはと思った時にパソコンスクールの宣伝が目に入ったOさん。

「いつまでも悲しんでもいけませんね! Oさん、頑張りましょうね。」
にっこり笑った私につられたのか笑顔で応えたOさん。

週に1回、Oさんだけは私が担当でワード、エクセル等を教えている。
時々はブレイクタイムにコーヒーを飲みお喋りをする。

ある日なんかはOさんから
「今日はお話だけの授業にさせてください」
と頼まれ仕事のことや亡くなったご主人や息子さんのお話を伺ったこともある。
最愛の息子や夫を亡くした悲しみや空虚感は計り知れない。

そのOさんがフロッサパソコンスクールに通い一年が経つ。
人間、不幸や悲しみが重なると卑屈になりがちだが彼女の場合
元々の育ちの良さに加えそのまま少女が大人になったようで
素直に自分を表現する姿にはなんのてらいもなかった。

つまりは、
ワードやエクセルの習得より誰かに自分の気持ちを分かってもらいたかったのではと思う。

最近は明るめなお化粧にシックなワンピースを身をまとったOさんが元気な声とともに
フロッサにやってくる。 

「主人の一周忌が終わりました!」
と満面の笑みを浮かべたOさんに

「ごくろうさまでした。」
とコーヒーを差し出した。

本日はパソコンスクール閉店、談話室に変更致します。
 


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